2012年5月5日土曜日

ファーストフード - Wikipedia


ファーストフード、または、ファストフード(英: fast food) とは、短時間で作れる、あるいは注文してからすぐ食べられる[1][2]手軽な食品・食事のこと。ここでは主にファーストフードを提供している外食産業について記述する。

英語の語「fast food」の発音は、短母音の[æ](アとエの中間の音)を用いた/fæst fuːd/(ファストゥ・フードゥ、ファスフードゥ)となる場合と、長母音の[ɑː](アー)を用いた/fɑːst fuːd/(ファーストゥ・フードゥ)となる場合とがある。アメリカ英語の話者の多くは前者を用い、イギリス英語(英国・オーストラリア・ニュージーランド)の話者とアメリカ英語の一部の話者は後者を用いる。同じ区別がある母音を含む英語由来の外来語には「cast」(キャスト・配役) 、「last」(ラスト・最後)、「master」(マスター・主人)などがあり、日本語表記は基本的に短母音である。なお、ドイツ語・イタリア語などでは「ファストゥ・フッドゥ」、フランス語では「ファストゥフッ(ドゥ)」と発音する。

日本では、イギリス英語等のように「ファーストフード」(ローマ字表記:fāsutofūdo)という長母音(ā:[ɑː])の発音・カタカナ表記でこの言葉が浸透した。日本放送協会(NHK)が2003年(平成15年)に行った調査でも、「ファーストフード」と言う国民が圧倒的に多かった[3]。広辞苑 第6版、明鏡国語辞典 第二版、ジーニアス和英辞典 第2版などの見出し語も「ファーストフード」が用いられている。この食事形態の外食産業が加盟する業界団体の日本フードサービス協会も「ファーストフード」に表記統一している[4]


肥満のための個人的な責任

一方、最初の母音のみをアメリカ英語にならって短母音(a:[ɑ])を用いる「ファストフード」(ローマ字表記:fasutofūdo)と発音・表記される場合も近年見られるようになった。これは、「アメリカ合衆国から入ってきた概念であるから、一般的なアメリカ英語により近い発音に従う」という原音主義や、「firstfast との間の意味の混乱を回避するため」という意見などからとされる[3][5]。共同通信社をはじめとする大手通信社、日本新聞協会、NHK、民放連では「ファストフード」を統一表記として、用字・用語集にもその旨記載している。なお、厚生労働省は、どちらにも統一していない[6]

[編集] 各地の様子

2010年末時点でマクドナルドを追い抜きサブウェイが世界一の店舗数を持つファーストフード店である[7]

[編集] アメリカ合衆国

食文化は、民族・地域によって異なるため、それらの枠を越えて広がるには時間がかかり、それどころか、全く伝播しないことさえある。米国は多民族国家であるため、民族・出身国・人種・アメリカ国内での地域差などで分かれる食文化の枠を越えなければ、大きなビジネスにはならない宿命があった。

「ファーストフード」の始まりは、アメリカ国内における民族・地域の枠を越えて民族横断的に受け入れられる味付けであったこともさることながら、エンゲル係数が高かった時代に「安価」であったことが最大の武器となって広まった。中産階級においては、「安価」であることよりも、「手軽に食べられる」「高カロリー」なファーストフードは、労働効率を上げる食事として受け入れられていった。ハンバーガー・ホットドッグ・フライドチキン・サンドイッチ・ピザなど、種類ごとに「フードチェーン」がつくられて大企業化していった。

第二次世界大戦後、アメリカのファーストフードチェーンは、本格的に海外展開を始めた。しかし、アメリカのノウハウそのままで海外進出した場合、為替の問題でファーストフードはかなり「高額」な食事になってしまった。特に、牛肉食の文化があまりない国に出店する際は、材料の入手でさらにコストが上がり、「ファーストフード = 富裕層の食事」という、アメリカ国内では考えられない図式で導入されることとなった。

海外進出初期においては「安価」ではないファーストフードであったが、「アメリカ資本」の「巨大フードチェーン」の進出は、競争力のないそれぞれの国の国内産業を圧迫するとともに、米国の文化侵略の象徴とみなされ、出店規制が行われることが多々見られた。


肥満人口は子供たちに影響を受けた

健康に関する知識の疎い貧困層ほど食事に占めるファーストフードの比率が高く、その為に貧困層ほど肥満になりやすい事が報告されている。また調理に時間がかからなく安価な点からファーストフードを選ばざるを得ない事情があるという[8]

[編集] ヨーロッパ

自国産業を保護する政策が強く、巨大資本のアメリカ系企業に規制がかけられている国がある。特にフランスでは、アメリカ資本のファーストフードチェーンは少ない。しかし、国内企業のファーストフードチェーンや、個人経営に近いファーストフード系の店は見られ、パニーノ、グレック、シシカバブのような、アメリカとは異なった種類のファーストフードも見られる。

アメリカの主導するグローバリズムの象徴としてファーストフードが取り上げられる場合もあり、反グローバリズム、スローフード、フェアトレードなどの、経済論理と文化論が混ざった「反ファーストフード運動」が見られる。

[編集] 日本

アメリカ式のファーストフードが1970年代初頭に日本に流入してきた。1970年に英国のウィンピーをはじめ、ケンタッキーフライドチキン・ドムドムハンバーガー、1971年にマクドナルド・ミスタードーナツ、1972年にロッテリア・モスバーガーが出店を開始した。なお、米軍統治下の沖縄県では、1963年に北中城村にA&Wの1号店が開店している。

日本には、アメリカ系ファーストフードチェーンの他、様々なファーストフードチェーンがある。「安い」「早い」というキーワードで言うなら、立ち食いそば・うどん・おにぎりのような古くからの食文化がファーストフードとなったのみならず、牛丼・ラーメン・カレーライスなど、近代になってから日本で展開されるようになった食文化もファーストフードチェーンとして営業している。

また、ファーストフードのライバルとなっている「安価」で「手ごろ」な食産業は、いわゆるレストランと自炊の間のすべて、と言えるほど、日本の食産業は発展している。ファミリーレストラン・定食屋・回転寿司のような店内で座席に座るものから、弁当屋・コンビニ弁当・菓子パンの他、デパ地下やスーパーの惣菜など、軽食産業の広がりは他国の追随を許さないほどである。

なお、これらのアメリカ式のファーストフードが日本に流入する以前を考察すると、江戸時代以来、蕎麦やうどんや天ぷら、寿司などの屋台形式の店舗が存在していた。こうした店舗がある意味においては「世界最古のファーストフード」であるとする考えも成り立つ可能性がある(勿論、「ファーストフード」の定義をどう考えるかにもよって、この考え方に対する議論が存在する事は言うまでもない)。ただし、一般的にはこれらの食事がファーストフードにひとくくりされることは少ない。


痛みの評価スケール

[編集] ファーストフード店での勤務

ファーストフードは「安さ」が1つの売りでもあるため、労働力のコストダウンも激しい。店員は、企業にとって社会保障をつける必要がない非正規雇用者が多く、昼間は主婦のパート、夕方以降は高校生や大学生や大学院生などのアルバイトが相場となっている。ファーストフードの興隆と時期を同じくして若者のフリーターが大量に生み出され、欧米にはあまり見られない日本固有の労働者の形を作り出した。

[編集] 中国

中国でファーストフードは「快餐 クワイツァン kuàicān」と呼ばれるが、必ずしも洋風のものを指す訳ではなく、トレーに中華料理を盛って食べさせる定食屋などにも「快餐」の看板が掲げられている。中国では、1980年代に始まった改革開放政策の結果、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドなどの世界的ファーストフード店が大都市から出店を始め、すでにかなりの地方都市にまで普及している。民族資本系洋風ファーストフードチェーンでは中国・台湾合弁のディコスが最大手である。もともと中国にある、麺類や餃子、ちまきなどの点心も、ファーストフードの性格をもっているが、欧米のチェーン店についで、台湾資本の豆乳を売り物にするファーストフード店が人気を集めるようになると、中華料理を基本にしたファーストフードチェーンも種々オープン するようになった。最近では台湾風のおにぎりチェーンや、日本式のラーメン店やカレーライスの店などにも人気が出ている。

[編集] 主な店舗

: 日本にチェーン店あり

[編集] 日本

ハンバーガー・ドーナツ・サンドウィッチ等
牛丼・うどん等

他、回転寿司店、立ち食いそば・うどん店


[編集] アメリカ合衆国

[編集] カナダ

[編集] ブラジル

[編集] 香港

[編集] 台湾

[編集] 健康問題

2003年の世界保健機関(WHO)の報告書は、ファーストフードは肥満と関連すると報告している[9]。2007年の世界がん研究基金による報告書は、がん予防のためにファーストフードの摂取を控えめにすべきだとしている[10]。アメリカでは、マクドナルドやペプシコなど11の主要なメーカーが、12歳以下の子どもにファーストフードなどの広告をやめることで合意している[11]

2009年台湾政府は、ファーストフードなど不健康な食べ物に特別に課税する方針。食生活の改善と肥満低下を目的としている。同国では、肥満の子供が四人に一人以上になっており肥満問題が取り上げられている。

米国でも問題となっており、米成人の実に3分の2が肥満となっており医療費支出は900億ドルを超える[12]


  1. ^ 広辞苑第6版「ファーストフード」
  2. ^ 明鏡国語事典第二版「ファーストフード」
  3. ^ a b ファーストフード? ファストフード?(NHK「ことばおじさんの気になることば」 2003年10月28日)
  4. ^ 財団法人日本フードサービス協会 … サイト内では「ファーストフード」に統一しており、「ファストフード」の使用例は無い(2010年12月現在)。
  5. ^ 「ファーストフード?」(NHK放送文化研究所 1999年8月1日)
  6. ^ 厚生労働省 … サイト内では「ファーストフード」の使用例が多いが、「ファストフード」も使用している(2010年12月現在)。
  7. ^ Julie Jargon Subway Runs Past McDonald's Chain The Wall Street Journal, March 8, 2011.
  8. ^ CNN ニュースの肥満特集より
  9. ^ Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases (WHO technical report series ; 916). World Health Organization, Geneva, 2003:147-149.
  10. ^ World Cancer Research Fund and American Institute for Cancer Research Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer: A Global Perspective, The second expert report, 2007:pp378-379. ISBN 978-0972252225
  11. ^ Limiting Ads of Junk Food to Children (New York Times, July 18, 2007)
  12. ^ 米疾病対策センター(CDC)の推計

[編集] 関連項目

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