特別養護老人ホームの相部屋論争の背景とは :ホームの課題
スポンサードリンク
特別養護老人ホームは相部屋の要否について、現在盛んに議論が交わされています。構図としては地方自治体と国との対決となっていますが、その背景には特別養護老人ホームに限らない行政構造の問題があります。では、現在、実際にどのようなことが争点になっているのでしょうか?
はじめに確認しておきたいのが、地方自治体と国それぞれの特別養護老人ホームにおける相部屋の要否についての考えの違いについてです。地方自治体は相部屋を支持し、国は個室を支持しています。
地方自治体側としては、実際に特別養護老人ホームを管理、運営する側に近い立場にあります。施設の予算を組んだり、入居者の割り振り、予約の管理、その他施設のメンテナンスから介護人員の配置や教育、給与支払いなど、数々の実務を取り仕切っています。
当然、実務を切り盛りする上では、効率化が求められますので、特別養護老人ホームは、相部屋であるほうが望ましいわけです。入居している高齢者も、必要とする介護は様々ですが、人数が多ければ、その中でいっしょに介護実務を実施したほうがよい場合もあります。
こうした内容はすべて予算に帰結し、予算が潤沢であれば、地方自治体も相部屋でなく、個室対応を拡充することができるでしょう。
どのくらいの人間が餌を食べずに生き残ることができる
これに対し、国側の考え方は、倫理や理論からのあるべき姿像を追求していると言えるでしょう。特別養護老人ホームによる介護の根底には、個人の尊厳の保持があります。このために、国は法令を制定し、各地方自治体に方針展開をしています。
国側も、特別養護老人ホームの運営が容易でないことは承知していますが、その中で、より一層の努力を地方自治体に求めています。法改正などにより、福祉費用を増大させ、施設を準備させることは容易なことです。しかし、それでは他の施策に影響が出る上に、地方自治体が潤沢な予算の上にあぐらをかいてしまい、努力を怠る可能性もあります。
老人福祉の世界に限らず、地方自治体は、予算の使い方に地域差が大きいものです。必死に努力しているところと、ただ中央からお金が落ちるのを待っているところなど、同じ予算を割り振っても違う結果となるケースが多いです。
現在、特別養護老人ホームの相部屋ひとつで意見が分かれている原因はここにあり、ここにメスを入れることこそが、将来の健全な老人福祉を下支えすることにつながると言えるでしょう。
スポンサードリンク
関連コンテンツ
dr.shock
生活保護者入所要件にみられる特別養護老人ホームの位置付けと今後について
特別養護老人ホームへの生活保護者入所要件は、介護付き有料老人ホームなどのものとは異なる内容となっています。 通常、民間の介護付き有料老人ホームなどにおいて、生活保護者入所要件は、各施設の設備・・・
生活保護と養護老人ホームのあり方
生活保護と養護老人ホームには密接な関係があります。生活保護などを受けていて、経済的に余裕がない高齢者については、養護老人ホームの利用が可能となっているためです。 養護老人ホームへの入所条件と・・・
80歳以上の高齢者の暮らし方は?
急速な高齢化が進み、80歳以上の高齢者の暮らし方は、大きく変わってきています。昭和の御世であれば、自分の子供と同居するというのが当たり前のように行われていました。 しかし、都市部においても地・・・
公的性格の強い特別養護老人ホームのあり方について
特別養護老人ホームはその役割と位置付けから公的な性格の強い施設です。入居条件として、身体上あるいは精神上の著しい障害を持っていることが挙げられ、結果的にいわゆる寝たきり老人や認知症の方がほとんどで・・・
介護サービスのない軽費老人ホームの成立背景
老人ホームの形態のひとつとして、現在、「軽費老人ホーム」と呼ばれる施設があります。 定義としては、一般的な老人ホームが法区分上「介護付き有料老人ホーム」と呼ばれ、介護サービスを基本軸としているの・・・
8ミリリットルsは何滴?
さまざまな障害種類を包みこむ特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームの入居者は、そのほとんどが重度の障害を抱えています。障害種類は大別して身体的障害と精神的障害とに分けられます。このため、精神的には健全でありながらも、精神障害をもった高齢者と共同・・・
高齢者とED
65歳からを高齢者と定められているが、医療の発達や食生活が良くなったために高齢者イコール枯れた老人というイメージではなく、まだまだ公私にわたり現役でも通用しそうな感じさえします。 このため、・・・
介護サービスのない軽費老人ホームの成立背景
老人ホームの形態のひとつとして、現在、「軽費老人ホーム」と呼ばれる施設があります。 定義としては、一般的な老人ホームが法区分上「介護付き有料老人ホーム」と呼ばれ、介護サービスを基本軸としているのに対・・・
介護付有料老人ホームにおける食事時間の苦心
高齢者の介護で重要なポイントの1つと言えるのが食事です。介護を続けていく上で、食事で気をつけなければならない点とは何なのでしょうか?ここでは、施設件数も多く、トータルでの被介護人数の多い介護付き有・・・
介護付有料老人ホームと介護保険料に見られる法改正の影響について
2006年4月の法改正により、介護付き有料老人ホーム認可の規制緩和が実施されました。具体的な内容としては、従来は介護付き有料老人ホームが常時10名以上の被介護者を有することが認可の条件であったのに・・・
介護付き有料老人ホームの申請条件緩和がもたらす新しい問題について
今回は、法改正が及ぼす、社会福祉全体への影響の大きさについて考えたいと思います。 とりあげるのは、2006年4月に実施された、介護付き有料老人ホームの申請条件の緩和です。かつては、介護付き有・・・
老人比率の拡大社会−超少子高齢化の時代に向けて
日本は世界一の少子高齢化社会です。63歳の世代が最も人口が多く226万人ですが、新たに生まれるベビーは年間110万人くらいしかいないのです。なんと63歳世代の半分以下です。新生児だけでなく、今の日・・・
介護付き低額老人ホーム に対する悲観的観測
介護付き低額老人ホームの増加が何故問題なのでしょうか?団塊の世代(主に1947年から1949年の第一次ベビーブームに生まれた世代)の定年を迎え、少子高齢化社会が本格化した日本。人口分布が逆ピラミッ・・・
0 コメント:
コメントを投稿